初版 ぼく語辞典

セブンイレブン化する思い出。

f:id:ABBshu:20180904190138j:plain

留学を終えて帰国したのち、僕が育った青森市に帰省をしている。

 

僕は基本的に年に2~3回ほど、地元に帰る。夏季および冬季の大学の長期休暇に合わせてだ。

そしてその地元へ戻るたびに、気が付くことがある。
セブンイレブンの店舗数の拡大だ。

青森県にセブンイレブンが初上陸したのは2015年6月12日。
全国的に見ても非常に遅い、45都道府県目の出店であった。

僕が大学に入学したのは、2015年4月。僕が地元を出ていく時点では、まだセブンイレブンは街に存在していなかった。

 

 

2015年8月。入学後初めての帰省。

f:id:ABBshu:20180904212258j:plain

高校生の時にしばしば訪れていた、青森市郊外。イトーヨーカドー等があるショッピングモール街の一角に、セブンイレブンは現れた。

「おー!本当にセブンあるじゃん!!」

とその時は新鮮な光景に対して興奮した。

 

2015年年末の帰省。

f:id:ABBshu:20180904190129j:plain

かつてミスタードーナッツが入っていた空き場に、新たなテナントがやって来た。

 

2016年夏の帰省。

f:id:ABBshu:20180904190134j:plain

青森市内の公園の一区画をつぶして、そこに新たな店舗が建てられた。

ここでは昔よく鬼ごっこや野球をしたものだ。

 

ひとたび上陸するやいなや、瞬く間に店舗数は増加していく。

もともとの数が0の状態を知っている分、その変化は明らかに目に見えて分かる。

 

そして今回の帰省。

f:id:ABBshu:20180904190132j:plain

ここもここで、いろいろと思い出のあるビルだ。
新たに商工会議所となり、そしてまたセブンイレブンも入った。

 

店ののぼり旗は高らかに謳う。

f:id:ABBshu:20180904190138j:plain

「あなたの暮らしに 近くて便利」。

帰省の度に、僕の街の暮らしはどんどん便利になっていく。

 

Mr.Childrenの曲の一節が思い出された。

また僕を育ててくれた景色が 呆気なく金になった
少しだけ感傷に浸った後「まぁ それもそうだなぁ」

(『I♡U』収録『ランニングハイ』より引用)

前述のセブンイレブンの建てられた公園の向かいには、県警や県庁がある。
実際職員らは、職場のすぐそばにコンビニができて、便利で良いなあ、とも言っているという。

まぁ、それはそうなんだけどさぁ。
たぶん、絶対にそうなんだろうけどさぁ。

 

セブンイレブンの一件も然り、今帰省では、ときの流れを痛いほど感じさせられる。

知り合いが認知症になって、おそらく僕のことを忘れてしまっていた。
今まで歩いていくには少し遠いと認識していた場所に、すんなりと歩いていけるようになってしまった。距離と時間の感覚が、幼いころと今とで明らかにずれている。

そしてセブンイレブン。僕が自然と何かを忘れてるより先に、光景の変化によって記憶がどんどん上書きされていってしまいそうだ。否が応でも。

 

だんだんと過去が遠くなっていく。
過去にしがみつくことで何が変わるというわけではないけれど、思い出とそれ付随する感覚が、自分からも相手の中からも失われていくのは、恐ろしい。程度の差こそあれ、それらがアイデンティティを形成していることに間違いはないから。

忘れてしまったことさえも忘れてしまわないように、こうして文章として書き記しておこうと思った次第。