初版 ぼく語辞典

とりとめのない、とりためたもの【欧州編①】

撮るには撮ったものの、どこにも載せずお蔵入りした写真がある。

ブログに載せようにも、Instagramにアップしようにも、それ単体ではストーリーを編めるほどの力を持たぬものたち。

それでもせっかく撮ったのだし、ただのデータとしてPCの中で腐らせてしまうのも、なんだか勿体ない。そんなわけで今回、些細な取るに足らない風景を、改めて集めてみた。

音楽のB面集を聴くような感覚で、ゆるゆるとお楽しみください。

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ヘイ・ヤー(ラトビア・スィグルダ、2017年9月)

自衛団?楽隊?いずれにしても愉快。
地図を持たぬ散歩では、こういう出会いが時々あるからなかなかやめられない。

 

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祈り(ラトビア・スィグルダ、2017年9月)

彼にできることは、ここで祈ることだけ。

ある日は雨乞い、ある日は祖国の恋人の無事、ある日は半永久的な自身の生涯を呪う。

その日の天気や季節で、表情も変わって見えてくる。

 

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開花(ラトビア・リガ、2017年10月)

雨の日の、ラトビア大学・人類学棟の1階。

傘立てというものがなく、みな入り口に傘を開いて置いていく。

新鮮な空からの水を浴びて、花々が彩り豊かに静かに咲き誇っている。

 

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余韻(ラトビア・リガ、2017年10月)

リガ市内にある公園にて。

アヒルたちのもう半身は、どこの次元に消えたのか?

不在が却って、何もない空間の存在感をありありと際立たせる妙。

 

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宵の浸食(ラトビア・リガ、2017年10月)

夕暮れ時の西の空が綺麗だなあと思いながら目線を下ろすと、

夜の闇の侵攻が、既にこっそりと始まっていた。

 

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四面楚歌(ラトビア・ツェースィス、2017年11月)

北欧の秋は短い。11月上旬にはもう葉っぱは大方落ちてしまい、冬の気配が日に日に強まる。
冬の暴威前線に抗うように、儚く小さな紅葉がひっそりと生き残っている。

 

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0.5里霧中(ラトビア・リガ、2017年11月)

突然の濃霧。30mも離れると何も見えなくなってしまう。

この深い霧を抜けると、いつの間にか見知らぬ土地に……という誰でも妄想できるような展開を頭の中で期待するが、不幸にも橋を越えると無事に目的地の図書館についてしまった。道のりが、目的地にもまさって重要になる日がしばしばある。

 

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成長期(イギリス・ロンドン、2017年11月)

誰しもみな幼少期がある。気になるあの子にも、ふてぶてしいおっさんにも、昔はあったんだ。そこに居るだけで愛でられるような、可愛いらしかった時代が。

しかしそれも永遠とは続かない。いつかは誰もが成長する。必ずしも可愛いままではいられない。それはピカチュウだってそうなのだ。今はサトシの肩に乗っているが、いつかは彼も自立しなくてはならない。多分。

 

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効果線(オランダ・バーグ、2017年12月)

何を強調するでもないが、ベンチを構成するラインが長々と伸びている。

欧州各国各町に必ずあるもの。ポスト、標識、トイレのピクトグラム……そしてベンチ。比べて見てみるのも面白い。

 

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一軒家(ラトビア・リガ、2017年12月)

猫も一軒家を構える時代だ。
キッチンなし、シャワーなし、トイレなし、ただし家賃は0€。
部屋を探している猫がいれば、ぜひ教えてあげよう。

 

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迷子2本(ラトビア・リガ、2017年12月)

果たしてどこからやって来たのか。林の中に、コンクリートの小さな柱が2本。
もともとここに何か設備があったのか。どうしてこの2つだけが取り残されたのか。周りを自然に囲まれて、寂しくなかろうか無機物たち。1本だけでなくて良かった。寄り添っていれば、少しくらいの寂しさも紛らわせられるだろう。

 

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討ち取り(ラトビア・リガ、2017年12月)

「一番首獲ったぞー!」

高々と掲げられる首。その表情は何を意味しているのか。

「イロイロあったが、まァ、悪くない人生だったんじゃねェの?」

 彼が最後にそう達観して、諦めゆえの満足とともに昇天したことを願う。